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FIREWATER

ポール.マッカートニー

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2008.11.23
若い頃は、ポールが大嫌いでした。
というか、ジョンレノンが大好きすぎたのです。ジョンの屈折したところや、破滅的なところ、正直なところ、単純なところ、繊細なところ、ルックス、ファッション、雰囲気、生き方などなど....。
あらゆる面で当時の自分の感じていたことを体現していて、僕のヒーローだった。ジョンのストロベリーフィールズは今でも僕のテーマソングです。

一方、ポールの方は全然眼中にありませんでした。ビートルズのアルバムを聴くときは、ジョンの曲の味付け役としてなかなか良い役割をはたしていたけど、それ以外のなにものでもありませんでした。コマーシャリズム的な計算高そうなところも大嫌いだったし、破滅的じゃないとこも気にいらなかった。
芸術家は破滅的じゃないといけないというのが当時の僕の考えだったもので。

でも人間とは年を重ねると変わるもので、徐々にポールの良さが分かってきてしまいました。
きっかけは、ソロ二作目の’RAM’を聴いたことです。ビートルズ時代にはなかった、ポールのストレートな感情が感じられ、「おや?」と思ったのです。
それから、ポールのソロのアルバムを買いあさりました。なにより驚いたのは、各アルバムで全然雰囲気が違うこと、そしてどのアルバムもはずれがないことです。
音楽に対し、常に貪欲に追求している姿勢がすばらしいです。どのアルバムにもそれぞれのカラーがはっきりでていて、一枚一枚本当に楽しめます。
そこから、ビートルズ時代にさかのぼっていき、その時代のポールの曲も聴くようになりました。
後期の完成度の高い作品から聴いていってどんどん初期の作品へとさかのぼりました。
そしてようやく、ビートルズとは、ジョンとポールの奇跡のめぐり合いが全てだったんだという結論にたっしました。本当に美しいんだよね。なんであんな違う声の組み合わせが、絶妙のハーモニーを作り上げるんだろう?


ミュージシャンは、外見のイメージもとても大切な要素の一つで、それが絵や小説のような媒体と違うところです。見た目だけかっこつけたミュージシャンには全く興味がないけど、いい音楽を作ってかっこ悪いミュージシャンもあまりよろしくない。
ポールが良くなり始めた頃、僕の中のポールの印象は、いい音楽を作るかっこ悪いミュージシャンでした。しかし、本当に自分の心とはわからんものだ。ポールがかっこよく映ってきました。

その年の五月に、人に依頼されていた絵を描き終え、次は完全に自分だけの絵を描こう!と思った時、ポール.マッカトニー以外に考えれなかった。その頃には、自分の中のポールのイメージはとても定着していて、その理想を頭におきながら描きはじめました。
とにかく、ポールの音楽を聴いて驚かされるのは、バラエティに富んだ作品の数々です。ロックだけではなく、’音楽’というものに対し色んな角度からアプローチを重ねていて、本当に感心させられる。

そんな多才な、多彩なポールをどう表現しようかなーと考えていたところ、BOOK HOUSE’Q’という美術書を多く取り扱っている古本屋で、チャールズ.ロロマというインディアン.ジュエリーのアーティストの作品集を買いました。
その作品にすごい衝撃を受けてしまいました。その思い切った色と幾何学的な石の組み合わせは、自分の中にあるけど、まだ気づいていない遺伝子を見つけたような感覚をひきおこしました。
この新しく発見された自分の細胞でポールを表現しようと思い、ロロマの作品集を広げ、ポールの音楽を聴きながら描いたのでした。

僕の絵はこのように二つの要素をからめて描くことが多く、それがまたとてもおもしろい。一見まったく違った二つの要素が僕の絵の中で混ざりあって一つの作品となって残っていきます。
このポールは、僕がイメージするポールそのものです。

先日、奥さんのお店でお客さんがこの絵をみて、「絵はいいんだけど、真ん中にいるポール.マッカートニーみたいのが邪魔なのよねー。」というコメントを残していったそうです。
うーむ、そういう見方もあるんだーと、失笑してしまいました。
by firewater19780530 | 2010-06-10 00:16